『幕末勤王志士と神葬-洛東霊山・靈明神社』の出版について

このたび霊明神社8世神主・村上繁樹の編著による『幕末勤王志士と神葬-洛東霊山・靈明神社』を上梓いたしました。そして、9月23日の秋季慰霊祭におきまして、出版奉告祭もあわせて行いましたことご報告いたします

 

出版の構想は、創祀200年(2009年)の頃からありましたが、具体化しないまま時が過ぎ、初世・村上都愷大人200年祭(2019年)にあたり、当社のことを後世に伝える事業としていよいよ本格的に始動しました

 

当社は小さいながらも、神道における葬祭を切り開き、神道墓地を開拓。幕末の頃には勤王派の志士たちの神葬を行いました。そのことが招魂社誕生の礎となり、それは後の靖國神社、護国神社へと続きます。しかし、残念ながら、一般的にはこのことがほとんど知られていません。霊明神社に伝わる口伝なども含めると、時代が進めば進むほど、その歴史がわからなくなっていくのではないかという懸念がありました。また、インターネットが普及し、誰でも情報が発信できる時代にあって、不誠実であったり、不正確な情報が流布されることに一定の懸念もありました。こういったことを鑑み、神社の歴史を書籍にまとめておくことにしました(また、私どもの認識が間違っていたところもあり、この機会に正すことにもなりました。ホームページは順次修正・加筆してまいります)

 

執筆作業に至るまでは、これまで整理していた当社の史料をあらためて精査・検討し、読めていなかった史料などもこの機会に翻刻を進めるなど、かなりの時間を要しました

また、執筆作業においても、うまく筆が進まないこともありましたし、何度も校正を行い、修正する作業にもかなりの時間を割きました

 

当社の霊明会の皆さま、崇敬奉賛会の皆さまにおかれましては、出版が遅れましたことを心よりお詫び申し上げます。皆さまのご先祖さまを大事にされるお心、志士たちへの想い、霊明神社への崇敬心が、本書に結実していることは言うまでもありません。いつもありがとうございます

 

さて、本書は大きく分けて3つのパートに分かれています

①村上家の歴代の神主(初世から5世)から霊明神社の歴史を紐解くパート

②神葬から勤王志士の人物像を紐解くパート

③霊明神社の神葬祭を紐解くパート

 

②は、歴史研究家の舟久保藍氏による執筆です

舟久保氏は天誅組に関する書籍などを出されており、志士への造詣が深くいらっしゃいます

さまざまな史料から霊明神社との関わりの深い志士たちの人物像を明らかにしていただきました

※天誅組の志士も霊明神社との関わりがあります

 

③は、皇學館大學の松本丘氏に執筆いただきました

松本氏は、神道史、神道思想史をご専門とされています。霊明神社の神葬祭を国学や神道史の中に位置づけていただく試みをいただきました

 

舟久保氏と松本氏におかれましては、本書のためにご尽力いただきましたこと、あらためて心より感謝申し上げます

 

なお、本書は霊明神社の貴重な史料をふんだんに掲載しています。幕末明治維新の貴重な研究材料になろうかと思います。有効にご活用いただければ幸いです

また、霊明神社の歴史を知り、霊山で眠る志士おひとりおひとりに想いを馳せ、霊山墓地にお参りいただければ嬉しく思いますし、京都霊山護国神社さまや霊山歴史館さまにお立ち寄りの際は、あわせて霊明神社にもお参りいただければ幸いです

 

そして、最後になりましたが、この出版事業を何よりも支えていただきました崇敬奉賛会の会長・梅田昌彦氏(梅田雲浜の玄孫)には、筆舌に尽くしがたい多大なるご支援をいただきました。深淵なる謝意を表します


 

※なお、これより神社でご購入いただけますので、ご興味あれば社務所にお申し出ください

 税込み価格3,850円です(サイン本です)

※一般の購入は下記サイトをご参考ください

※今回の出版に関して、講演のご依頼などございましたら、まずは気軽にお問い合わせください


 

<目次>

はじめに(村上繁樹)

 

 第Ⅰ部 霊明神社の歴代神主

 

一 創祀者 初世 村上日向目源都愷大人(村上繁樹)

 1 都愷、初世神主となるまで

 2 朝廷に出仕する

 3 霊明社の創建に至るまで

 4 神葬墓地創設の適地、霊鷲山

 5 用地の獲得と霊明社の創建

 6 「猿田彦命神石略伝」

 7 都愷、神去る

 [史料紹介]

 

二 二世 村上丹波源美平大人(村上繁樹)

 1 美平を知る

 2 美平、二世神主となる

 3 美平、神去る

 [史料紹介]

 

三 三世 村上丹波源都平大人(村上繁樹)

 1 都平を知る

 2 吉田家からの永世許状

 3 都平、三世神主となる

 4 霊山に霊明社の屋敷を初めて建立

 5 新たな神葬地開拓

 6 志士の埋葬と招魂祭

 7 文久三年(一八六三)の霊明社

 8 元治元年(一八六四)の霊明社

 9 禁門の変とその後

 10 慶応から明治へ

 11 招魂の社となる

 12 招魂社の建立がつづく

 13 廃藩置県と上知

 14 養正社の設立

 [史料紹介]

 

四 四世 村上歳太郎都順大人(村上繁樹)

 1 歳太郎を知る

 2 六世神主春一の思い出

 3 明治維新期の歳太郎

 4 霊山に帰る

 5 歳太郎、四世神主となる

 6 名目上の隠居

 7 招魂祭斎主を務める

 8 歳太郎の孫娘のこと

 

五 五世 村上市次郎大人(村上繁樹)

 1 市次郎を知る

 2 青年期の市次郎

 3 高松神明神社

 4 高松神明神社神官に就任

 5 私塾省思館の開設

 6 高松神明神社記録

 7 市次郎、神去る

 8 市次郎への思い

 

 

 第Ⅱ部 幕末志士の招魂と神葬祭の歴史

 

一 志士の埋葬と招魂祭 (舟久保藍)

 1 船越清蔵――霊山における志士招魂祭の嚆矢

 2 松浦松洞――霊山における実葬の嚆矢

 3 吉田玄蕃――招魂祭を営み霊山を支える

 4 久坂玄瑞と神道思想

 5 靖国神社の源流となる招魂祭

 [史料紹介]

 

二 神葬祭の歴史と霊明社(松本丘)

 1 神葬祭への歩み

 2 儒葬から神葬へ

 3 山崎闇斎学派の葬祭説

 4 吉田流葬礼の普及

 5 国学の台頭と神葬祭普及運動

 6 人神祭祀と招魂祭の発生

 7 霊明社の神葬祭

 8 明治以降の神葬祭

 

あとがき(村上繁樹)

 

資料編

 「霊明神社神名帳」

 霊明神社・村上家関係年表

 

人名・事項索引